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月を抱く

第1章 未知の味


「この世界には魔物と人間がいますが我々のような人間足の他、
より魔物に近いデミックス達がいます。
人間は勿論、デミックスも魔物も動物も全て尊い命である事を忘れてはなりません───」

教会に入ると既に司祭が幼い子供たちに他種族と人間の関係の話をしている所だった。
ラキの夢見が悪くなったのもコレを聞いた日からだ。
司祭の手が飽くまでは用事も話せない。

「司祭様!愛する亜人の血だけで生きるってロマンがあるけど、
デミックスも魔物も血は飲めるの?」

「おやおや、血だけというのは健康に悪いですよ。
そうですね、私たち吸血鬼は亜人の中でも雑食ですから
飲んだ事はありませんが魔物の血も飲めるでしょう。
けれど、ピュアヒューマンの血だけは飲んではいけませんよ」

ピュアヒューマン……、かつて"人間"だったもの。
今や“人間”とは人間足ではない亜人すら含む全般を示す。
ピュアヒューマンは魔物との戦争に破れ衰退、
世界は魔王のロストテクノロジーにより荒廃している。
亜人は人ではないと見なされていた歴史があり、
吸血鬼は呪術により産み出された唯一の人工亜人だ。
魔王に一番近かった亜人として500年経った今や
国のような文化をもつ亜人は吸血鬼が主体となった。

ピュアヒューマンは絶滅危惧種であり、か弱い亜人に分類される。
まともに文化的生活を営んでいれば同じ人間足に
危害を加えたり食料にするなんて事はあってはならない。
吸血鬼がピュアヒューマンの血を啜れば衰弱し3日と生きられないだろう。
他にも体長が小さい亜人も衰弱が早い筈だ。

先程の子の言うような"好きな亜人の血だけで暮らす"なんて
恋愛中毒の若者が考えそうなデタラメな話でしかない。

「異界信仰の強いデミックス、他種族を食べる魔物、
これ等には注意と敬意を払って関わりましょう。
か弱い人間には力の加減をする事、分かりましたか?」

「「「はーい」」」
「よろしい、では食事にしましょうね」

教会にいる子供たちは親がいない場合がある。
吸血鬼は"うつる"ので両親が吸血鬼ではないのに
宿した子供が吸血鬼、というのはよくあるのだ。
それが原因で家庭から見放された子供たちは教会しか寄りべがない。
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