第3章 沼地の井戸
───……
「なんだこりゃ、一体……」
森には焼け焦げた道が続いている、が、さっき人間を助けた場所には
何度も同じ場所を這い回ったであろう黒々とした跡がある。
そこから伸びる焦げた道は大木がいくつもなぎ倒されていた。
地響き、遠くから低い雄叫びが"2つ"聞こえる。
「嘘だろ、まさかアレ他にも居るのか……?」
さっさと沼地に帰りたいが人間は見当たらない。
これからの事もあるし確認しに行くしかないだろう。
それにしても、ここの辺りはアンダーグラウンドでも"田舎"だ。
モンスターと動物にさほど差がない程度には穏やかで
あんな驚異になるようなモンスターは棲息していなかった。
あのモンスターは何なのか、火?泥?熱は強い。
元になっているやつが獣ではなく人型なのだからヒトなのか?
「いや……」
自分の肉のない腕を眺め肋骨に指を滑らせる。
乾いた音色がし、その白い線に囲まれた中身は空洞だ。
自分も人型をしているが人間ではない、らしい。
リザ(名前を教えてくれないので俺はリザと呼んでいるトカゲ)によると
俺は死体にたまたま魂が宿った、いわば人形(ゴーレム)らしい。
だとすると、あの人型モンスターもゴーレムなんじゃないだろうか。
ゴーレムは呪術で作られたものと、意思から発生するものがある。
もし誰かの作意から産まれたとしたら術式が描かれていて、
それを阻害してしまえば魂を固定している魔力が止まり
入れ物は動かなくなる筈だ。
……問題はあの灼熱の物体にどう近づけば壊せるか、だが。
と、森を駆けているうちに雄叫びが近づいてきた。
2つ大きな影があり森の木々は根刮ぎ燃やされるか倒され
歪な即席の大きな空間が出来ていた。
「!」
ちがう、片方はあの燃えるヒトガタじゃない。
ここら辺では見たことがないが、
5倍に引き伸ばしたゴブリンみたいな生き物だ……。
よく分からないがコイツも狂暴そうだ。
しかし、よくよく見てみると巨大ゴブリンは
体に千切れた布が引っ掛かっているのが見てとれる。
まさか、アイツ……!先程みた人間を既に殺した後なのか!?
俺があの時、すぐに助けようとしていれば……