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月を抱く

第3章 沼地の井戸


「どいて!」

骨が砕けるかと思うような衝撃があり、骨は無事だったが俺はバラけた。
あっ、とデカブツが申し訳なさそうにした気がする。
(が、牙で唇がめくれた顔は表情が分かりにくいので
残念そうか不愉快そうな顔をしたようにも見える……)

「そうだ、強いね!お前は強いよ!もう何もない」
「ナニモ、ナイ!」

「何もない!」

会話をしている!アイツ喋れたのか!
雨の中、興奮したヒトガタから火が立ち上ぼり激しい蒸気が辺りを満たす。

「でももう力比べできないね!」
「デキナイ?」

「うん」
「デキナイ……」

ヒトガタがしゅん、と声色を落としたかと思うと
その姿がジュワッと消火され一回り小さくなるのが分かる。
それはやはり泥と炭?の塊でドロリとした人形に見えた。
慌てて体をかき集めてスケルトンの姿を取り戻す。

「そう、遊びはおしまい」
「オシマイ、ヤダ」

「大丈夫、また遊べるよ」

するとその怪物はみるみるうちにボロ切れをまとう少女になった。
泥人形に少女が並び、おそるおそる手を伸ばし、……触れた!

「いっ……」
「……!イタ、イ?」

「…………」
「ダ、ダイジョウブ……?」

少女は顔を歪めたわりに険しい顔をしながら泥を探る。
やがて、泥人形の腕を引くと駆け出した。慌てて追いかける。
見間違えでなければ、あの少女はニルダという子の連れだ!
火の気のなくなった泥人形はボタボタと自らの体から
汚泥のようなものを撒き散らしてドタドタと走っていく。
あまり行かないうちに川が見えてきた、少女は構わず中に入る。

「おいで!」

戸惑いながら川に入り込んだヒトガタの体がみるみる流されていく。
怯えて脚をあげたのを許さず、再び巨体になるとヒトガタを川に押し込んだ。
ガシガシ、と川に何度もつけられやがてそれはスッカリ泥が落ちた。

「よし」「……?」

それは美しい縞模様の入った緑の鉱物と白金色の金属で出来た
ずんぐりとした人形に見えた。間接や背中にヒビがいくつも入っており、
中からの熱に辺りの空気が歪んでいる。

「こりゃ凄い……ゴーレムだったんだな」
「「ゴーレム?」」

怪物が再び少女の姿になり、ゴーレムがそれを抱える。
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