第10章 遊郭後編
禰󠄀豆子が一段と暴れ出す。
名前は横目でその様子を見ると心配をしつつも堕姫を見た。
その瞬間、ふと風を感じる。
宇髄だ。
シャラリと装飾の音を靡かせ、名前の前に宇髄が現れる。
「おいおい、あれ竈門禰󠄀豆子じゃねーか。派手に鬼化が進んでやがる。お館様の前で大見得切ってたくせになんだこのていたらくは」
『面目ありません、宇髄さん』
名前は言葉を失っている炭治郎の代わりにそう謝る。
「もう一人の柱……二人いっぺんに殺せる……手間が省けたわ」
堕姫は言うのを宇髄は向き直って大きくため息を吐き出す。
「うるせーなお前と話してねーよ。失せろ。お前上弦の鬼じゃねえだろ、弱すぎなんだよ」
宇髄がそう言った瞬間、堕姫の頸がゆっくりとずれ、そのまま自身の手の中に落ちた。
ーー
禰󠄀豆子は未だ暴れようとしている。
炭治郎は抑えきれずに、今度は窓を突き破って道路へと落ちていく。
『宇髄さん、もう一人の鬼は上弦の陸でした。毒の鎌を持っています。そして、おそらくこの鬼と同時に頸を切らないといけない』
名前は先ほど戦った妓夫太郎の事を話す。
宇髄はそれを聞くと名前の肩の傷を見て少々驚いた顔をしていた。
「受けたのか、傷を」
『はい、しかし禰󠄀豆子の炎で解毒ができたみたいです……禰󠄀豆子は今眠ったようなので、傷を受けない方ように気をつけた方がいい』
外で禰󠄀豆子の暴れる音が小さくなって消えていくのを感じる。
もうこの戦いで禰󠄀豆子を頼りにはできない。
「よくもアタシの頸を斬ったわね!!ただじゃおかないから!!」
堕姫が子供のように喚きながら二人の会話を中断させる。
「じゃあこいつだけ頸を斬っても意味ねえって事か」
『はい』
ここで名前は一つ違和感を覚えた。
名前が足止めできたとしてすぐに回復したであろう妓夫太郎が姿を現さない。
とっくに追いついていても可笑しく無いのに。
堕姫は相変わらず泣き喚き、宇髄と言い争いをしている。
……もう何処かに潜んでいるのか。
「うわあああお兄ちゃああああん」
堕姫がそう叫ぶと、
……その背中から
妓夫太郎が現れた。