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日の守護者【鬼滅の刃】

第9章 遊郭前編


ときと屋の中は慌ただしくなっていた。
それもそのはずだ。
初めて店に来た客がまず絶世の美形であり、さらにはいきなり大金を女将に握らせ花魁を指名したのだ。


準備が出来るまで名前は奥の間に通され待っていた。


普通は、花魁をいきなり指名など出来ない。
段階を踏んでやっと会えても、最初は口も聞いて貰えないかもしれないのだ。
しかしそこは大金を女将に握らせる事で解決させた。

名前は待っている間、いきなり忙しくさせた人達に心の中で謝罪した。




「苗字様、御用意ができました。こちらへどうぞ」
『悪いね、ありがとう』



遣いの禿が襖を開けてお辞儀をして立ち上がり名前を花魁の部屋まで案内する。
その後を名前はゆっくりと着いて行った。



「失礼します、鯉夏花魁」


一際豪華な装飾がなされた襖のある部屋の前で禿が止まり、部屋の中に向かって声を掛けた。
小さく返事があったあと、禿は襖を開けた。



「苗字様、こちらが鯉夏花魁です。ごゆっくりどうぞ」



部屋の中を見ると、豪華絢爛な着物に身を包み、高そうな簪を付けた鯉夏花魁が座っていた。
名前は中に入ると鯉夏と向きあうようにあぐらをかいて座った。



『急にすまなかったね』
「……」



鯉夏は見るからに警戒している。



『そう構えなくていい。俺は聞きたいことがあってここに来た』




名前の言葉に鯉夏は首を傾げた。
いきなり大金を使い会わせてくれと言う客は大抵、大金持ちが一夜を共にしたい、見栄を張りたい、そんな欲望にまみれた者だった。
しかし名前からはそのような感じはなかった。


「何が目的なの」


短く名前に問う。



『近頃、この街全体を見ていて変わったことがあったら教えてほしい』
「何故……そんな事を聞くの。あんな大金を払ってまで……」


宇髄からの情報によると、鬼が居るとすれば店の内部の者が怪しいようだ。
こういう事は女将か花魁に聞くのが一番だ。



『なにか気になっている事があるなら話してほしい、もしかしたら……それを解決できるかもしれない』



鯉夏はしばらく沈黙を保っていたが、左右に目線を泳がせた後、ゆっくりと名前と目線を合わせた。



「この街は……」
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