第8章 異変
名前の屋敷からさほど離れていない山の丘。
木々は少なく、広場のようにもなっている。
そこに、炭治郎と名前は向き合っていた。
炭治郎がヒノカミ神楽の呼吸をゆっくりと始める。
名前は攻撃を受け止めるために、刀を抜いていた。
「ゴォォ……」
空気が震え、炭治郎の周りが熱く燃え上がる。
ヒノカミ神楽は日の呼吸そのものだ。
「ヒノカミ神楽……炎舞!!!」
すさまじい威力の一撃。
全力で来る炭治郎の技を、名前はしっかりと受け止めた。
刀同士が共鳴し甲高い音を鳴らす。
重い。
……これが日の呼吸。
名前が攻撃を受け流し、炭治郎の方を向くと。
「はぁ、はぁ……っは、ぁ」
呼吸が乱れ、息が上がっている炭治郎がいた。
『炭治郎、大丈夫か』
「っは、…い…」
声をかけるも、中々息が整わない。
『まだ体がヒノカミ神楽についていってないな』
「……そう、みたいです……」
無限列車や那田蜘蛛山では必死過ぎてあまり覚えていないが、確かにヒノカミ神楽を使った後は呼吸を整えるのに時間がかかった。
今は特に、集中してヒノカミ神楽の呼吸を使ったので、体への負担が大きい。
『まだ実戦ではヒノカミ神楽は使わない方がいい。一発で仕留めきれなかった時、回復に時間がかかるようでは駄目だ』
炭治郎の様子を見て名前は判断する。
まだ炭治郎にはヒノカミ神楽を使う身体が出来ていない。
もっと鍛錬が必要だ。
炭治郎は悔しそうな表情をしていた。
「修行が必要って事ですよね」
『そうだね。今まで別の呼吸を使ってたんだ、体がついていかないのも当然といえば当然だ』
炭治郎はにはそう言っても慰めにはならないだろう。
ヒノカミ神楽を全て見たかった気持ちはあるが、ここは炭治郎の体力優先だ。
また鍛錬をしながら見せてもらおう。
『さぁ、次は俺の天の呼吸を見せる番だが、大丈夫か?』
疲労の色が抜けきらない炭治郎に名前は問う。
「大丈夫です、必ず受け止めます」
『分かった。ならしっかり見ておくんだよ』
言葉を信じ、名前は刀を構えた。