第1章 序章
竈門炭治郎は最終選別を生き抜いた。
夜明けまではあと一刻もない。
始まりの場所へ急いで走る。
ここで気を抜いたらいけないと、刀は常に構え、周りの気配や匂いを気にしながら進む。
疲労困憊で、傷口の痛みも麻痺している。
ふと先程現れた矢絣の羽織を着た鬼殺隊員を思い出す。
「不思議な匂いのする人だったなぁ」
どこか自分と似ているような匂い。
どこか懐かしい匂い。
改めて思い出すとそう感じる。
名前を告げてから矢絣の羽織の鬼殺隊員は少しだけ考えるような仕草をするが、すぐに姿を消してしまった。
またどこかで会えるだろうか。
いや、また会う気がする。
そんな事を考えてると、目の前に藤の花を見つける。
切れた息を整えながら鬼の居る藤襲山を切り抜け、周りを見渡し少しばかりの達成感を覚える。
そこにちょうど日の出が差し込む。
長い長い夜が明け、眩しい光が炭治郎を包むと目を細めた。
「おかえりなさいませ」
「おめでとうございます、無事でなりよりです」
七日前と変わらぬ姿の輝利哉とかなたが淡々と炭治郎達を出迎えた。