第7章 無限列車
最終列車である無限列車が出発し、営業時間も終わったのか、人はほぼいなくなった駅構内。
名前はじっと線路を見ていた。
微かにしていた鬼の気配も、列車と共に殆どしなくなったため、鬼はあの列車に居たのだと名前は確信する。
しかし、油断は出来ない。
列車の鬼は炭治郎達と煉獄が必ず倒す。
そう信じ、名前は辺りを見回した。
ふと、気配を感じる。
使われなくなっている車庫の方からだ。
『……この気配は……』
ーー
『兄さん、兄さん。俺に稽古をつけてください』
あれは兄が鬼殺隊に入った頃だったか。
父、兄の背中を追い、名前は毎日剣術の腕を磨いていた。
兄は鬼殺隊に入れはしたが、剣術の才能には恵まれているとは言えなかった。
歳下の名前の方は才覚もあり、歳が離れているのに互角に渡り合える事ができるようになっていた。
しかし、名前はそんな事は気にしてはおらず、ただ兄と剣の稽古をする事が楽しかったのだ。
父と母が天の呼吸の継承者をまだ鬼殺隊に入る前の名前に決め、名前に付きっきりになってくると、稽古をする回数が減らしていった。
「父さんと稽古しろ」
『なぜです、俺は兄さんと稽古が……』
「煩い!!俺は才能がないんだ!!お前は俺をバカにしているのか!!自分の方が強いと!!」
『そんなこと』
「惨めな気持ちになるんだよ!!」
『兄さん……』
名前が最終選別を受ける頃には、兄は任務に行かず、家の暗い部屋に閉じこもるようになっていた。
そして、名前が最終選別に向かった後。
苗字の屋敷に鬼舞辻が現れた。
「だれだ……」
父と母は鬼舞辻を認識する暇もなく瞬殺された。
鬼の気配気づいた兄はその部屋に行くと、そこには血の海が広がっていた。
そこにあるのが両親の屍だと分かっても、驚くほど悲しくはなかった。
「お前も、死ぬか」
鬼舞辻の冷たい言葉が兄の肌をなぞる。
父と母が殺された。
俺を才能がないと邪険に扱い、最後は相手にもしなかった父と母が。
これは、いい機会なのではないか。
「お、俺を……」
強くなる方法がある。
強くなって名前を……
「鬼に……してください……」