第2章 歯車が動き出す
鋼鐵塚は炭治郎に自身の打った刀を渡した。
「さぁさぁ刀を抜いてみなぁ」
炭治郎は恐る恐る鋼鐵塚の打った刀を鞘から抜き、天井に切っ先が向くように持った。
名前も鋼鐵塚の一歩後ろに座りその様子を伺う。
「日輪刀は別名色変わりの刀と言ってなぁ、持ち主によって色が変わるのさぁ」
鋼鐵塚がそう説明していると、その刃が変化を始める。
ゆっくりと炭治郎の刀は黒色へと変わった。
「黒っ!」
「黒いな」
「えっ!?黒いとなんか良くないんですか!?不吉ですか!?」
鋼鐵塚と鱗滝の微妙な反応に炭治郎は焦り声を荒げる。
「いや、そういうわけではないが、あまり見ないな、漆黒は」
鱗滝が過去の記憶を遡りながら言うが、炭治郎の顔は晴れない。
すると今まで黙って刀の色が変わるのを見ていた名前が一歩前へと出た。
『俺の刀も漆黒です』
その言葉にその場に居た者全員が驚いた顔をした。
疑っているのか分からないが、名前は見せた方が早いと思い座る時に自身の横に置いていた刀を取るとゆっくり抜いて見せた。
黒光りし影より濃い色の刀身が露になる。
「おぉ……こりゃ真っ黒だなぁ」
「本当だ……黒い…」
鋼鐵塚と炭治郎はそれぞれ刀を見て呟いた。
名前自身も、黒い刀は周りにもなく聞かないので珍しいとは思ってはいたが、様々な刀を日常的に見ている鋼鐵塚でさえこの反応だ。
『それに黒い刀は出世できないと言われているんです』
「えっ、そうなんですか!?」
名前が悪戯っぽく言いながら刀を仕舞うと炭治郎がまた顔を焦らせた。
『でも俺は鬼殺隊で甲まできた。君もきっと出世できるよ』
「あはは……頑張ります……」
名前はこれから鬼殺隊として任務に付く炭治郎を励まそうとにっこり笑って言って見せた。
炭治郎はその作り笑いに苦笑いを浮かべつつ、首を縦に振った。
「キィィーー!俺は鮮やかな赤い刀身が見れると思ったのにクソォォ」
隣では鋼鐵塚が一人で暴れ始め、炭治郎に覆い被さる。
「いたた、危ない!落ち着いてください、何歳ですか!!」
「三十七歳だ!!」
そんな二人のやりとりを見ながら、名前は目を細めた。