第5章 温かなハーブティー
リーバルが旋風を巻き起こして勢いよく飛び去ったあと、彼がいなくなったからか、少し緊張が解れる。
そして、猛烈な寒気に襲われた。
この櫓には壁がない。当たり前だが、常に暴風が吹き込んでいる状態だった。それも、雪を含んだ。
は支給された防寒着を着てはいたが、体を動かしていなかったため、今頃になって寒さを感じていた。
残されたリト族の戦士は、「悪いが、大人しくしててもらおう」と一言断りを入れて、の両腕を縄で縛った。
そして柵と繋いでここから逃げられないようにすると、彼はすたすたと櫓から出ていった。
そしてすぐに戻ってくると、がいる櫓の中央に鍋を置いた。
ここで料理でもする気…?と思ってると、彼は鍋に水を注ぎ入れた。そして、火打石を使って鍋の下に焚べた薪に火を点けようとしている。
何度か打つとやっと火が点いた。暴風に晒されて消えそうになるが、両翼で囲うと、みるみる火は薪全体に行き渡り、心做しか暖かくなった気がする。
ありがとう、と言おうとしたが、彼は何も言わずに飛び立ってしまった。
優しさではなく、きっと自分は今は捕虜で死なれたら逆に困るから、といったところだろう。
自由を奪われたは、今はもうどうすることも出来ないと悟った。
近くに細かな刺繍が施されたクッションが落ちてたので、足を使って近くに寄せ、炎を背にして横たわった。
背中がじんわりと温まってくる。背中を丸めて小さくなる。
寒いところで眠るのは禁物だが、今はもう何も考えず眠ってしまいたいと思った。
姫様たちは無事だろうか。手分けして私なんかを探していたらどうしよう。なんてバカなことをしてしまったんだ。
自分を責めているうちに、の意識は微睡みの中に溶け始めていく。
微睡みと現実の狭間で、はふと子供の時のことを思い出していた。
──────
誰かの暗い部屋の中。背中を丸めて横たわる自分。地面は固く冷たい。そして誰かが私を呼んで、肩を掴んできた。
その誰かのことは、私は嫌いだった。怖くて、強くて、嫌いだった。
でも「誰か」が助けてくれた。あれは─────。