第5章 温かなハーブティー
の言葉に彼はフンと鼻を鳴らす。
矢は仕舞わずそのままに、と同じ目線にしゃがみこむと、顎を高くしてこちらを見下ろした。
「まったく、あんなことをしておいて“そんなことしてない”だなんて。笑えない冗談だよ、ほんとに。その都合のいい頭に撃ち込みたいくらいだ」
物騒な言葉に、は少しだけ後ずさった。
だが、酷く怯えたような態度は見せず、あくまで気丈に振舞った。
きっと彼の方を見上げた。
「私の命を奪ったら、王家を敵に回すことになるかもしれませんよ」
嘘だ。そんな傲慢なことこれっぽちも思ってないが、この状況を打開するには、嘘の1つや2つでもついておかないと間が─否、命が持たない。
「王家?ハイラル王家のことを言ってるのかい?君は本当に…」
「リーバル!」
彼がいい終わらないうちに、別のリトの戦士が櫓に飛び込んできた。
「先程のカラクリが、別の男を連れている。おそらく、その女の仲間かと…」
きっとカラクリとは玉子くんで、男はリンクが兵士の誰かのはず。よかった。
というより、リーバル…?この男が、目的の戦士だというのか。
冗談はこの暴風だけにして欲しい。
こんな奴に、神獣の繰手を任せるなんて考えられない。早く姫様に、考え直すことを伝えなければ!
全くもって最悪な出会い方をしてしまった。
元はと言えば、私が皆とはぐれなければこんなことには…。
「チッ、次から次へと…!わかった、僕が向かおう」
そう言って、リトの戦士──リーバルが勢いよく振り返り立ち上がった時。
「いたっ…」
拍子に彼の持つ矢が、の頬を掠めてしまった。
鋭利な矢じりはの白い頬を裂き、赤い線を作った。
の声に、リーバルは思わず振り返る。
鋭い目を少しだけ目を丸くすると、傍にあった箪笥からガーゼを取り出すと、彼女に放った。
酷い…。この男には、心というものがないのだろうか。
血も涙もない、というよりは人が生命を授かった瞬間に与えられるであろう心がないように思える。
悶々とした気持ちを抱えながら、は頬にガーゼを押し当てた。
冷たい風のせいか、キンキンと痛む。
「君は代わりにこの女を。真実がわかるまで、君は捕虜としてここに居てもらうよ。逃げないように括っておいてもらえるかい?」
「わかったぜ」