第5章 温かなハーブティー
リト族の若い弓兵は、視界の悪い吹雪の中にいる何かを睨みつけていた。
忌まわしい歩く小さな物体と、よろめきながら歩く人型。
一緒に行動している兵士と目配せすると、吹雪に煽られながら村へと戻った。
村の櫓の1つに兵士たちが集まり、何か話し込んでいる。
中心にいる、大きな弓を背負った紺色のリトの男は、腕組みをしていた。
そこへ、偵察に行っていた弓兵が戻ってきて、彼に先程見たものを伝えた。
「また来たのか…」
唸るように彼は呟くと、翼を開いて何かの合図を出した。
周りにいたリトの男たちは頷くと、各々弓や槍を持ち吹雪の中へ消えていく。
残された彼──リーバルは櫓の外へ出た。
「この僕がいる限り、リトの村へは1歩も踏み入らせないよ!」
彼が両翼を広げると、足元から凄まじい上昇気流が発生する。
回転しながらそれに乗ると、すぐさま高度を上げて飛び立った。
その目はまるで狩りをする猛禽類のようだった。
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「どうしよう、転んだ上に逸れるなんて…」
頬を染めながら、ザクザクと豪雪の中をは進んでいく。
先程の暴風の際、と小さなガーディアンは転倒し、少しだけ滑落してしまった。
幸い怪我はないが、吹雪のせいでお互いの姿は見えなくなり、一行から逸れてしまった。
何度も大声で名前を呼んだが、吹雪の轟音で自分の声すらよく聞こえなかった。
「玉子くん、いる?」
小さなガーディアンは単眼を光らせて、ピーピーと返事をした。
「よかった、1人にしないでね…」
その言葉の間も、小さなガーディアンは音を出し続けていた。
まるで、何かを警告するかのように。
「ん、なに?どうした…」
ヒュッ─と何かが耳の横を掠めていった。
足元に、細いものが突き刺さっている。
雪からそれを引き抜いてみると、それは鋭利な矢だった。
「うそ…っ!?」
マフラーで口元を覆い、体勢を低くする。
誰かが狙って打ってきたことは確かだ。あと数ミリずれていたら、耳を大怪我していたに違いない。
いや、この吹雪と暴風の中、よくギリギリのところに打ってきたものだ。敢えてそうしたのか…相当の狙撃手が近くに潜んでいるはずだ。
緊張から、思わず心臓が早鐘のように動き出す。
その時、ガシッと何かに両肩を掴まれ、地面から足が浮く。
「な、なに──!?」