第4章 とろけるバター煮込み
慌てて返そうとしたが、彼は首を振った。
「いえいえ、私の分は充分ありますし、採りすぎてしまったもので、むしろ貰っていただけたら嬉しいです」
「でも…」
「いいからいいから。もしまたご縁があれば、その時にでも。では、これにて失礼」
「あ、ちょっと…!」
感謝の言葉を述べる間もなく、彼は足早にその場を後にしてしまった。
リンゴが5個と、バナナが2房。
「どうしようかなあ…」
実際のところどうすることもできない。
だが、ちょうど甘いものが欲しかったところだった。
せっかくなのでありがたく頂戴しよう。
ナイフを取り出し、スルスルと皮を剥いていく。
剥いた皮を鍋を温める火の中に入れていくと、水分と反応してパチンと大きな音を立てた。
リンゴとバナナは食べやすい大きさに切り、豪快に鍋の中に入れていく。
果物の甘い香りが漂ってくる。
ああやっぱり、この時間が好きだ。
踊る炎、沸き立つ香り、軽快な音…生きてる心地がする。
「何作ってるんですか?」
ハッとして顔を上げると、前かがみになってこちらを覗く、金髪の剣士の顔があった。
「あぁ、リンク…びっくりした。さっき、親切な旅の方に、リンゴとバナナを貰ったから、加熱してるとこだよ」
彼は鍋のそばにしゃがむと、すんと匂いを嗅いだ。
いい匂い、と呟くと今度はすーっと形のいい鼻を膨らませて匂いを嗅ぐ。
「ここへね、バターを入れると…」
少し緩くなったバターを匙で掬い、鍋の縁に叩きつけてバターを落とす。
ジュワァと音を立ててバターが泡立つ。
木のお玉でかき混ぜると、飴色になった果物から湯気が上がった。
「美味そう…」
まるで少年のように目を輝かせる彼を見ていると、和やかな気持ちになる。
甲冑と剣を背負う彼は立派な兵士ではあるが、中身はまだ食べ盛りの少年のようだと思った。
ふと、は思い出す。
「リンク、私に敬語なんて使わなくていいよ」
彼女の言葉に、リンクは首を傾げた。
「どうしてですか?」
「…何となくよ。お願いできる?」
うーん、とリンクは腕組みをして、「わかり、わかったよ」とぎこちなく返事をしてくれた。
ありがとう、とは感謝の気持ちを述べる。
小さなボウルに果物のバター煮込みを盛り付け、匙も付けるとリンクに差し出した。
「はい、まずは姫様にね」