第3章 デミグラスソースに血が騒ぐ
籠の中から、ティーポットとカップ、ソーサー、ミルとシュガーが入った瓶、お茶菓子が次々と出てきて、テーブルの上に並べられる。
ゼルダはテキパキと忙しそうに手を動かしているが、その表情は親に内緒で悪戯をする子供のようだった。
は目の前で起こっていることを一つ一つ頭の中で整理した後、我に返った。
「姫様、手伝いますよ。お茶ですか?あ、今から飲みます?」
「いいえ、私に淹れさせてくださいな」
ご丁寧にお湯が入ったピッチャーまで持ってきており、その用意周到さに圧倒され、それから火傷をしなくて良かったと安堵した。
ティーポットには予め茶葉が入っていたのか、蓋を開けるとハーブのいい香りがした。
そこへ、こぽりこぽりとゆっくりお湯を注ぐと、蓋を閉めて蒸らし始めた。
ゼルダは、ふうと一息ついて「失礼しますね」と言って椅子に腰掛けた。
「も座ってください。今から、お喋りしましょう?」
にこり、とはにかんだような笑顔。
その可憐さに瞠目するとはただ「はい…」と言っておもむろに向かいの椅子に腰かけた。
ゼルダは平たい瓶のコルクの蓋を開けると、中に入っていたクッキーを摘み、口へ運んだ。
部屋中にハーブティーの香りが漂い始めたところで、ゼルダはティーカップへ丁寧に注ぐ。
王女とあろう者が、こんな時間に部屋を抜け出し庶民とお茶をし、お菓子をつまむ。
こんなことがバレたら、私は一体どれほどのお叱りを受けるのだろうか…。
天井の方を見ていた視線を、お茶を飲んでお菓子をぽいぽい口に入れては幸せそうな顔をする、年端もいかない少女の顔に向けると、なんだかもうそんなこと、どうでもよくなってきた。
「またと、ここでお話できるなんて、夢みたいです」
「私もです、姫様。厄災への対策とはいえ、これも何かの縁でしょうか」
ゼルダは口元を隠して上品に笑うと、ハーブティーに口をつけて「熱っ」と慌てて口から離した。
「姫様、大丈夫ですか?直ぐに冷やさないと…」
「平気ですよ、。ごめんなさい、見苦しいところを見られてしまいましたね」
恥ずかしそうにそう言うと、誤魔化すようにまたクッキーを口に入れた。