第3章 デミグラスソースに血が騒ぐ
違和感が晴れぬまま、時間は動き出す。
なんだろう、何かが引っかかるな…
そう思いじっと料理を見つめるが、特段変わった点はない。
そんなに気がつくことなく、舌鼓を打ちながら、ハイラル王はふと懐かしそうに目を細めた。
「そなたが、父親と共にここへ来たことを思い出したぞ」
がやっとカトラリーを持ったところでハイラル王が話し始めたものだから、思わずカチャンと音を立ててカトラリーを置き、膝に手を着くと背筋を伸ばした。
「そう緊張せずとも良い。食事をしながらで結構」
ハイラル王の言葉に、は少しだけはにかんでお礼を言うと、再びカトラリーを手に取ってサラダに手をつける。
「もう十年以上も経ったのか…そなたと、そなたの父クラマールがここへ来たのは…。あの日のことはよく覚えておる。彼は、息災なのだろうか。」
少しだけ遠くの方を見ながらハイラル王はそう言うと、ビーフシチューに入っている、少し大きめな人参を口に入れた。
「父のことは、あれから分かりかねますが…私も、あの日のことはよく覚えています。姫様と、初めてお会いした日でもありますから」
自分が会話に出てくると思ってなかったのか、ゼルダはパンをちぎる手を止めての方を見る。
目が合ったは、懐かしそうに微笑む。
つられてゼルダも恥ずかしそうに笑い、食堂に穏やかな雰囲気が流れた。
そんな様子に、いつもは眉間に皺を寄せているハイラル王の表情が少しだけ和らぐ。
「その晩は、私がわがままを言って、と夕餉を共にしましたね。ったら、ハンバーグをたくさん頬張って嬉しそうにして…」
ゼルダの言葉に、今度はが恥ずかしそうに笑った。
「ひ、姫様…!当時の私にとって、ハンバーグなんてもうご馳走でしたので…今思えばなんて失礼なことを…」
私は楽しかったですよ?と続けるゼルダの言葉に、子供の頃をいろいろと思い出したのかは顔を赤らめた。
すると、何かを思いついたようにの表情が、ふっと真面目になる。
ハンバーグ…デミグラスソース…ビーフシチュー……。
「もしかして…!」
慌てたようにスプーンを手に取り、まだ湯気が立つビーフシチューを口に運ぶと、確かめるように味わった。
「味が、違う…」