第3章 デミグラスソースに血が騒ぐ
正直、何をどんな言葉にしたか全く覚えていない。
12年振りに玉座の間へ通され、威厳溢れるハイラル王に挨拶をした。
厳粛な雰囲気が玉座の間に漂い、はただただひたすらに心臓が縮まる思いをしていた。
そんな中で、目の端に映ったドレスを着たゼルダは、ビストロで会った時よりも遥かに大人びているように見え、その成長ぶりに素直に感動した。
扉の辺りに立っているリンクも、重そうな甲冑を着こなしており、まさに姫付きの騎士に相応しい佇まいだった。
成長していないのは私だけなのかもしれないなぁ、と頭の片隅に考えが過った。
そしてハイラル王から直々に、厄災復活を阻止するため、栄養補給係を任命する、との言葉を頂戴しは片膝をつくと、
「そのお役目、命を賭して果たさせていただきます。この身が朽ちるまで、ハイラル王国にお仕え致します」と、深々と頭を下げた。
というのはつい数十分前の話で、今は食堂の椅子に腰掛けて、昼食の提供を待っている。
肩身狭いことこの上ないが、この食事にもきっとなにか意味があるに違いないと思い、ひたすらに耐え抜く決意をした。
扉の辺りにはリンクとインパが立っていて、その2人の存在もまたの緊張感を煽っているようだった。
そんな中で、インパはこちらと目が合うと、少しだけ目を細めて、何か言いたげにアイコンタクトをしてきた。
それに、少しだけ緊張が和らぐ。
何か言った方がいいのか、しかし王より先に口を開くのは無礼か…悶々と考えていると、廊下からカチャカチャと何かを運ぶような音が聞こえてきた。
あ、懐かしい…と思っていると、暗い紅色のベストを着た給仕係が入ってくる。
それぞれ金属製のフードカバーに覆われた皿を持っていて、まずハイラル王の前に置かれる。
そしてゼルダ、の順に置かれたあと、3つ一斉にふわりとフードカバーが開けられた。
閉じ込められていた湯気がふわっと立ち上り、一瞬で食堂内が料理の香りに染められた。
湯気の後に現れたのは、ビーフシチュー、サラダ、テリーヌ、パン。
まずは、匂いをすんと嗅いだ。
あれ、なんだか…と思い少しだけ首を傾げたが、そんな様子のを特に気に気に留めることなく、ハイラル王がグラスを掲げ、食事が始まった。