第2章 再会はこの場所で、ケーキと共に
「師匠、行ってまいります」
「行ってらっしゃい」と柔らかい声が返ってくるなんて思ってないが、そう言わずにはいられなかった。
ぱっと顔を上げ、扉を開けて石畳を踏む。
まるで伝説の勇者が、故郷を離れ魔王を退治しに行く時のような振る舞いだ。
は一歩一歩踏みしめるようにしてビストロから離れ、城への距離を縮めていく。
「よう!」
「おはよ、おじさん」
「あら!大きな荷物持ってどこへ行くんだい?」
「ちょっとお城までね」
「またうちにも寄ってね〜!」
「もちろんだよ奥さん!」
すれ違う街の人に声を掛けられ、足は止めないままで軽快に挨拶を交わしていく。
聞いたかい?がお城に行くんだってさ、という言葉は、水面に落ちた雫のように瞬く間に広がっていった。
の軽い足取りの後ろには、ハーメルンの笛吹男のように街の人を引き付けていく。
城下町の門に近づく頃には街の人が集まってきており、束の間の旅立ちを送り出してくれているようだった。
「〜!頑張っておいで〜!!」
皆のその声に、なるべく顔をしっかり見ないように歩いていたは思わず足を止める。
ちらり、と後ろを伺うように振り返ると、ハンカチや三角巾、木のオタマを頭上で振る街の皆の姿が映る。
朝日が昇り、地平線を照らした時のように目の奥がギュッと熱くなる。
いや、ここで涙は見せまいと、は踵を返す。
それでもなお、彼らの声援は止まない。
は、門をくぐると片手を上げ、小走りに城へ走っていった。
直接厄災をどうするとかはできないけれど、厄災に立ち向かう皆の役に立てるよう、私は命に代えてもお仕えしよう。
人知れず胸に違ったの群青色の瞳から流れたそれが、まだ低い太陽に照らされた。