第1章 第一篇
「ぷは…、んやぁ相変わらず美味しいね…」
「あほか…」
満足そうに顔を上げれば、唇を一舐めしうっとりとした目でミトリを見つめた。
ミトリはといえば恥ずかしさから顔を赤らめ目をそらす、それをカカシはミトリの両頬を手で挟み無理矢理に自分の方を向かせれば再び強引に唇を奪った。
先程よりも長く深い、ミトリはどんどんとまるで音を立てて蕩かされて行くような感覚に襲われた。カカシと恋仲になってから幾分立つわけではないが、何度か体を交えた。その中でも今回は一層ガッツいてくる。
中々かまわなかったからというのもあるのだろうがきっとバレンタインだから、なのだろう。
意外とイベント事に律儀なカカシは細かな記念日さえ記憶している。それに今回は恋人たち、恋人になるものたちが主役の一大イベント。逃すはずもなくチョコをねだって来た。ミトリの性格上こういったプレゼント系統は割かし余裕をもって用意して渡すタイプだが、ここ最近A級任務連続の激務。その報告書をまとめる事務作業も入りこの一か月間は休日もなく仕事漬け。ミトリはそもそもワーカーホリックという訳ではない。然し自分に回ってきた仕事はとりあえずちゃんと仕上げる。的な考えが深く根付いており半ワーカーホリック状態だ。
「そろそろ休もうよー、狗神刑部の美兎貍さーん?ワーカーホリック何て柄じゃないだろ俺とイイコトしようよ」
誘ってくるカカシにやれやれと呆れつつもまんざらでもない表情で好きにさせている。自分で甘いと感じていても惚れた弱みだ仕方ない。
「ん、わかった。いいよ」
端正な顔立ちで迫られれば誰だってOKしてしまうだろう。ミトリは手にしていた報告書を傍の机に放り出し、カカシの頬に手を添えた。
「仕事、終わんなかったら責任取れな。」
「了解」
その言葉を吐き出すとほぼ同時に唇を奪っては舌をねじ込んだ。先程の口吸いもあってか直ぐに蕩けた。
潤んで煌めく瞳に映る波打った自分を見てはああ幸せだなんてお互い思ったりして。
上忍同士、いつ死ぬともしれない身で愛し合ってしまっているのだ。上忍同士の恋愛は禁忌というわけではない、実際上忍同士で結婚して家庭を築いているものも少なくないわけで。ただ付き合いだしたり結婚したりなんかするとどちらかが忍の任から身を引いたり転職したりするのがほとんどだ。家庭を築いてもなお上忍で居続けるのは中々珍しい。
