第28章 今宵はふたりで Ⅱ【P273〜の続き、🤍&🐾 ♟️*】
「…………。」
意識を混濁へと沈み込ませたヴァリスの瞼に、夢とも記憶ともつかぬ映像が映し出される。
しんしんと、雪が降っていた。
森のなかの全ての彩色をその上から塗り替えていくように、降りしきる真っ白な粉雪。
その景色の仲を男に手を引かれて歩いていく幼い少女の姿があった。
白梅鼠色の髪にガレナの瞳を持ち、真っ白な肌をしたその少女は、
男に叱られながら、何度も後方を振り返っていた。
その視線の先には暗いくらい森の闇と、その地面から伸びた自分の付けた小さな足跡がある。
それを見て、これを辿っていけば家に帰れると、そう思った。
それくらい、『 』は幼かった。
( 『 』は……?)
その少女の名前だけ、まるでノイズが入ったように聴き取れない。
彼女の名前を聴き取ろうと、
じっと耳を傾け吐息すら厭うように身を潜めていると、ふっと視界が暗転する。
暗闇に眼が慣れてきた頃、そこにいたのは。
「誰……?」
歩幅を数歩隔てた先に佇んでいたのは妙齢の女だった。
白梅鼠色の長い髪を編み込んで結い上げ、
血の赤のようなルビーの瞳を持ち、その頭上には白銀に輝く王冠を乗せている。
鈍色の地に髪の色と同色の繊細なレースが
スカートの裾に控えめに飾られたのみのシンプルなドレス姿のその女は、
ヴァリスの姿を見留めるなり瞳を解く。