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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第27章 今宵はふたりで【過去作派生中編 ‎🤍→主←🐾 ♟️】


シロは中庭に降り立っていた。



「シロ、………シロ。大丈夫?」

その後ろ背に声をかけると、ゆっくりと彼が振り向く。



「シロ……?」

伸ばした指を掴まれ、引き寄せられる。気づいた時には彼に抱きしめられていた。

あまりの驚きに固まってしまったヴァリスは、彼の身体が仄かに震えていることに気づく。



「……お前はずるいな」



「シロ……?」



「お前があの女を許すなら、我はあやつに何もできないではないか。

お前は、我に生きる意味を、居場所を与えた。

………なのに我は、お前に何も返せていないのだぞ」

ヴァリスはゆっくりと手を動かして、シロの背に指をかける。



「!」



「そんな事ないよ。

シロはたしかにぶっきらぼうだけど、私のことをいつも気遣ってくれるじゃない。

私は、その優しさにいつだって救われているんだよ」



「ヴァリス………。」

驚きに染まった瞳。ややあって、その唇が仄かな弧を描いた。



「敵わぬな、………お前には」

そう言って優しく瞳を解くと、片手を差し出す。



「……踊ってくれるか?」

ダンスホールから聴こえてくる音楽に、ヴァリスも気づいたらしい。

デビルズパレスで彼女と最も多く、踊る練習をした曲だった。



「はい、喜んで」

微笑んで、彼の掌にみずからの指を重ねた。
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