第27章 今宵はふたりで【過去作派生中編 🤍→主←🐾 ♟️】
「シロくん、そこまでだ」
その声とともに入室してきたのはルカスだった。
シルビアと彼の間に割り込んで、彼女へと向けられたその刃を遠ざける。
「だが、この女は………っ」
「主様のお顔を見て気づかないのかと言っているんだよ」
その言葉にヴァリスを見る。彼女は涙の滲んだ瞳で安心させるように微笑って見せた。
「わ、私は大丈夫だから………、その剣を下ろして」
ゆっくりと剣を鞘に収めるシロ。直後、慌ただしい靴の音が近づいてきた。
「シルビア……! 何をしているんだ!」
「お、お兄様……! これは、…………その……っ」
あわふたと慌てるシルビアの顔が酷く醜悪に見える。
彼女のためを思って言っていたのなら、堂々とその理屈を通せばいいだけと言うのに………。
「ヴァリス殿、我が妹の非礼を、なんとお詫びすればよいか………、」
ヴァリスに向かって頭を下げるフェリスに、仰天したのは彼女のほうだ。
ウォールデン家当主の分家筋であり、
何より貴族で彼女よりも遥かに地位も身分も上の人物である彼が、
ヴァリスに向かって深く頭を下げたのだから。
「そ、そんな……顔を上げてください、伯爵様。
あなたが命じた訳ではないでしょう?」
「だが、女性の手にそのようなケガを負わせたのは事実だ。
妹にはきつく言っておくから、僕にできる詫びは何でも言って欲しい」
「お詫びなんて……。でも、………そうですね、
私から願うことは、………伯爵様、シルビア様が寂しがらないように、
彼女と過ごす時間を、一日のうちに僅かでも作って差し上げてください」