第7章 強くなりたい
「朝から鍛錬なんて珍しいな。」
汗を垂らしながら、鍛錬用の竹刀を振っていると背後から声を掛けられると思わず、飛び上がるほど驚いてしまった。
背後を振り返るとペンギンが笑顔で手を振っていた。
『うわっ!びっくりした…。ペンギンかぁ。ペンギンこそ、朝早くからどうしたの?』
「俺は偶々早く目が覚めたから風にあたりに来ただけだ。この船は潜水する事が多いから外の空気もしっかり吸っとかないとな。
それはそうと、鍛錬なら俺も付き合うぞ?」
『え?!良いの!?』
はペンギンの言葉に目を輝かせる。
「嗚呼。ほら、掛かってこい。」
そう言ってペンギンも鍛錬用の竹刀を一つ取ると、は彼に向かって竹刀を振るい始めた。
カンッ…カンッ……。
竹刀を打ち合う乾いた音が響く。
かれこれ1時間、ペンギンと一緒に手合わせをしていた。
『はぁ…っ!もういっちょ!』
「よし!その調子だ!」
最初に比べて技術面では少しずつ上がってきたであるが、昔から鍛えられているペンギンと比べると体力もその技もまだまだだ。
汗でツナギの中は濡れていたが、脱がなかった。いや、脱げなかった。
原因は分かりきっている。
少しずつ他のクルー達も起き始め、甲板に出て来ては、達に声を掛けていた。
「朝から元気だな!」
「ペンギンなんかに負けるな!頑張れ!」
お互い夢中で鍛錬を続けていたが、朝食が出来たと声を掛けられ、漸く手を止めた。
暑さで火照ったの頬は赤くなっていた。そんな彼女にペンギンは、冷たい水とタオルを手渡した。
『はぁ…っ、暑い…。ありがとう、ペンギン。』
「お疲れさん。よく頑張ったな。暑かったらツナギ脱いでも良かったんだぞ?中何も着て無かったのか?」
『いや…それは…。ちょっと…。』
の言葉が曖昧になると、ペンギンは何かを察した。
(そういえば、昨日キャプテンの診察受けた後、ちょっとの様子おかしかったな。)
「そうか。まぁ、水分はしっかり飲めよ。」
これ以上は触れないことにした。それが賢い判断と言えるだろう。深く追求して後でキャプテンにバラされるのは自分だ。
二人分の竹刀を片づけ、彼女の頭をポンと優しく撫でた。