第7章 強くなりたい
コンコンコン……。
通い慣れた船長室の扉をノックする。
『ローさん、朝ご飯持ってきました。』
扉越しに声を掛けてみたが、反応は無い。
まだ寝ているのだろうか。そうならば、おにぎりを机の上に置いておいたらきっと分かるだろう。
『………失礼します。』
そっと扉を開けると、ローは案の定ベッドに寝転がり、読みかけの本がそこら中散らばっていた。
きっと昨日も夜遅くまで読み耽っていたのだろう。
夜更かしばかりするから、彼のクマはいつも酷い。
そっとオニギリをテーブルの上に置いて立ち去ろうと思ったが、無防備に寝こけているローの姿が珍しくてつい彼の顔を覗き込んでしまった。
(やっぱりローさんイケメンだなぁ…。これで性格も良かったらとてもモテるのになぁ。
いや、顔だけでも全然モテるか。)
そんな事を勝手に考えながら、ジロジロと彼の顔を眺めていると、不意にベッドから手が伸びての腕を掴むとそのままベッドの中へと引き摺り込んだ。まさか起きていると思わず、驚いた表情を浮かべる。
『きゃっ!起きてたんですか?!』
気付けばローが寝ていた場所に自分が寝ていて、ローに上から見下ろされていた。
「あんなにジロジロと見られていたら嫌でも起きる。それにしても、男の寝込みを襲おうなんて、良い度胸じゃねぇか。」
『お、襲うなんてとんでもない!朝ご飯出来たので届けに来ただけです!』
顔を真っ赤にして抗議したが、ローはニヤニヤと口角を上げながら此方を見下ろしていた。
だが、の様子に満足したのか、フッと鼻で笑うと大人しくから退いてくれた。
「冗談だ。お前は揶揄い甲斐があるな。」
『……っ、毎回こんな事されてたら心臓が持ちません。今度やったらローさんの朝ごはん全部食べちゃいますからね!』
プリプリと怒る彼女の姿をローは愉しげに見つめていた。
反応が面白くてついちょっかいを掛けてしまった。
「そう怒んなよ。これで許せ。」
ローがそう言うと、頬に柔らかい感触が触れる。ローに頬へとキスを落とされたのだと気付くと同時に身体の体温が一気に上がるのが分かった。
男慣れしていないにとっては強過ぎる刺激に何も言わずに逃げるようにローの部屋を飛び出て行った。