第7章 強くなりたい
再び目を覚ますと、時計の針は昼前を指していた。
(今日は農園に薬草分けて貰おうと思っていたのに!もうこんな時間!)
慌ててベッドから飛び起きると、何とかローの腕から抜け出す。
自分が起きた事でローの目も覚めていたが、変わらず不機嫌そうだった。
『ローさん!私今から薬草分けて貰いに行ってきます!』
バタバタと身支度をしながら伝えると気怠げにローが起き上がる。
「待て。俺も着いていく。」
寝癖の付いた髪を指先で整えながら告げるが、は大丈夫だと首を振る。
『私一人でも大丈夫です。昨日行った薬屋の裏ですし、何よりもう大人ですから!』
着いてきてもらえるのは嬉しいが何から何までお供して貰わないといけない程子供じゃない。
それに、ローも何かとやらなければならない事も溜まっているはずだ。
休める時は彼にも休んで欲しかった。
ローは少し考える素振りを見せると、分かったと返事をすると同時にあるものを渡してきた。
「何かあったらこれで俺を呼べ。」
渡されたものは電電虫だった。確かにローの部屋にも彼の顔そっくりなものを見た事がある。
確かに何も連絡手段が無いよりはマシだと、大事にカバンにしまう。
『ありがとうございます!日没までには戻ります。』
そう言って身支度を整えると、駆け足で船を飛び出した。
昨日訪れた薬屋はそう船から遠くは無かった気がする。
昨日来たばかりだが、初めての島であった為、少し道順はあやふやだ。周りを見渡しながら前へと進む。
ローからお金は預かっているが、少しでも節約しようと自分が調合した薬も何種類か持ってきた。これが売れれば少しは足しになるかもしれない。
物思いに耽りながら歩く彼女を背後から見つめる者たちがいた。
「あれって’毒姫'じゃねぇか?」
「裏社会で噂の女か…!」
「売り飛ばせば高い金になるかもしれねぇ。女一人なら楽勝だろ。」
その集団はニヤニヤと下品な笑みを浮かべながらの後を尾行していった。