第7章 強くなりたい
朝になり窓から陽光が差し込み始める。
薄らと目を開くと見覚えのある天井だ。
ここ暫くはずっとローの部屋にお世話になっていた。
(あれ、昨日船に戻ってきて、シャワー浴びて…その後の記憶が無い。)
よっぽど疲れて寝落ちしたんだろう。寝た時の記憶が無い。いつもはソファーに寝ようとするけど気づいたらローにベッドへと移動させられている。
最初は戸惑ったけど、1週間もすれば慣れたものだ。慣れって怖い。
案の定隣では半裸のローが静かに寝息を立てている。
目のやり場に困るから服を着て欲しいと頼んだこともあったが、聞いてくれたことは無い。
いつもはそっとベッドから抜け出して、起こさない様に身支度をした後、朝食を作りに行くのを手伝ったり、掃除をしに行く。
だが、今日は抜け出そうとした瞬間長い腕にベッドの中へと引き摺り戻される。
『きゃっ!…ローさん。私、ご飯作りに行きたいです。』
柔らかなシーツに背中を預け、不満気にローの顔を見やると、また彼も寝起きだからか目元は不機嫌そうであった。
「今日くらい良いだろ。もう少し寝かせろ。」
ロー一人で寝ていれば良いものを、自分を抱き枕の様にしての身体を抱き締める。
突然お互いの心臓の音さえも聞こえてしまいそうなほど縮まった距離に自分の心拍数が上がっていくのが分かる。
(本当に心臓に悪い…。)
何とかもがいて彼の腕から脱出しようとしているとより、抱き締められている腕の力が強くなった為、潔く諦めた。
だが、温かい体温に包まれている感覚は悪いものでは無い。寧ろ安心して心地良かった。
気付けばの瞼も閉じて二度寝をしていた。