第6章 初めての上陸
「シャワー、先に入って来い。」
『じゃあ、お先にすみません。ありがとうございます。』
シャワーだけは毎日ローの部屋のものを使わせて貰っている。
お腹がいっぱいになり、船に戻ってきた安心感もあってか、眠気も感じ始めて来た為、彼の言葉に甘える事にした。
シャワーを浴び終えると、濡れた髪をローに乾かしてもらう。気付けば二人の間でのルーチンになっていた。最初は断っていたけど、いつまで経っても乾かそうとしない為、ローが風邪を引くと痺れを切らしたのだ。
キャプテンに態々髪を乾かしてもらうなんて申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、他人に髪を乾かされるというのが心地良く、毎日の楽しみの一つになっていた。
「座れ。」
ローはシャワーから上がった私を見てドライヤーをコンセントに繋げると椅子に座らせた。
船長にこんなことをさせているなんてきっと私だけだろう。この前ベポにこの事を話したら羨ましいと言われてしまった。
『お願いします。』
ローの綺麗な指先が絹のように滑らかなの髪を撫でるように梳かしながら髪を乾かしていく。
温かい風を受けながら髪を撫でられる感覚は心地良い。元々眠たかったのもあって、無意識にコクコクと船を漕ぎ始めていた。
「眠いか?もう少しで終わる。」
『ん…眠たいです…。』
頑張って起きようと思うが、意識は徐々に朦朧としてくる。
ドライヤーの音が止まる頃には、の目元は眠気でとろんと蕩けていて、幼い子どもの様だった。
後は自分の部屋に帰って眠るだけなのに。
だが、ローはの目の前に立つとそのまま屈んで彼女の肩と膝裏に手を回し、抱き上げた。
突然抱き上げられたが、眠気に負けて動揺することすら忘れてしまっていた。寧ろ、ローの体温が心地良くて彼の首に抱き着いてしまう。
そのままローは彼女の部屋では無く、自分のベッドに彼女を寝かせた。