第6章 初めての上陸
ローと二人で店の外へ出ると、店に入った頃の雰囲気とはガラリと変わっていた。
艶かしい雰囲気を漂わせるお姉さん達が店の前に立っていたり、カップルがホテルへ向けて歩みを進めていたり、何というか大人な雰囲気が満載である。
こういった雰囲気は慣れていない。気不味気にローの方を見上げると顔色ひとつ変えていなかった。流石大人だ。
周りを見て固まっていると、「行くぞ。」と声を掛けられると同時にローの長い腕が自分の腕に絡み付く。
突然の接近に顔が茹で蛸の様に赤く染まってしまった。
「こうしていれば声を掛けられる事もない。この通りを抜けるまで耐えろ。」
『はい…ッ。』
歩いている間お互いの会話はない。ただ前を見れなくてひたすら地面と向き合っていた。
そんな私を面白がってか、ローは態と自分の指と彼の指を絡めて繋いでみたりと遊んでいた。
こっちはそれどころじゃないというのに。
ローの腕が解けたのは、船の停泊場の目の前だった。全然この通りを抜けるまでじゃないと抗議したかったが、疲れもあって言う元気も無かった。
船に戻ると、留守番のクルー以外はあまり帰ってきてない。何処へ行っているのかなんて、朝のはしゃぎ様で分かってしまう。
ローの方を見たが、彼ももう船からは出ないつもりなのか、自室へと真っ直ぐに向かっていた。