第6章 初めての上陸
「大丈夫か?」
ローの姿を呆然と見上げていると、目の前に彼の手が差し出される。
『ありがとう…ございます…。』
その手に自分の手のひらを重ねるとグッと引き上げられ、立ち上がると、元いた椅子に腰を掛ける。
「気の悪りィ思いさせちまったな。」
『そんなことないです。確かに彼女達の言う通りローさんはカッコいいから、私なんかより綺麗な女の人と飲んでも良かったんですよ?』
自分でこんな事を言っておきながら、心はモヤモヤとしていた。「ウチのクルー」とそう言って貰えたのが飛び跳ねるほど嬉しかった筈なのに。
きっと今の言葉は自分の本心では無いけど、隣にいるのは自分の様な人間では無い気がして、やっぱり自分には彼が吊り合わないと思う。そういう気持ちの方が強かった。
「それは俺がお前を助けた事が間違ってたと言いてェのか?お前は俺があんな安っぽい女の尻を追いかける様な人間に見えていたのか?」
『ち、違います。けど…綺麗なお姉さんと飲む方がローさんは楽しいのかと思って…。』
ローの声はさっきと違い明らかに怒った様な低い声だった。その声に自分の声も自信なさげに小さくなっていく。
すると、ローの大きな手が自分の顎に手を掛け、無理矢理にでも彼と目線を合わせられる。
「いいか、。俺は仲間を侮辱する奴はどんな奴でも許さねェ。もうお前はハートの海賊団の一人。俺の命令は絶対だ。俺が側に居ろと言ったら離れるな。」
彼から向けられる真っ直ぐな目線が私を捉え、心臓がバクバクと五月蝿く高鳴る。一言一言、自分に言い聞かせるような言葉に、黙って頷く事しか出来なかった。