第6章 初めての上陸
殆どの荷物をローに持って貰いながら、一通りの生活用品は揃えることが出来た。
『沢山買っていただいて、ありがとうございます。』
「これから必要になるものだろ。お前が行きてェ店はねぇのか?」
行きたい店と言われて少し考え込む。確かにこんなに大きい街は珍しいし、少し見て回りたいという気持ちもあった。しかし、一番に思い浮かんだのはやはり薬屋だ。自分の生業でもあるし、これからの為に少しでも薬を調剤しておきたいというのもあった。
『うーん…そうですね。あ、薬屋を覗きたいです。もしかしたら珍しい薬草とかが売ってるかもしれないので。』
「……分かった。」
一方ローはまさか薬屋と言われるとは思っておらず一瞬目が点になったが、彼女が行きたいと思うならばと、老舗の薬屋へと付き添った。
薬屋に到着するとやはり大きい街とあってか、自分の店で取り扱っていた薬草や薬品と比べ物にならないくらい大量の薬が並べられていた。
彼女にとってはその珍しい物の数々に、どれも宝物のようにキラキラとして見えていた。
『凄い…!この薬草は解熱鎮痛作用もあるのね…。』
一緒に来たはずのローを置いてけぼりにする程、彼女の興味は薬に惹かれていた。
しかし、ローも医者だ。薬には興味がある。
それに麻酔薬など、在庫の少ない薬剤を買い足してもおきたかった。
売られている薬品を眺めていると、カゴいっぱいに薬草や薬品の入ったアンプルを詰めた がローの元へやってくる。
先程のブティックでの とは大違いだ。まるで、欲しいオモチャを買って欲しいと強請る子どもの様な顔をしていた。
『ローさん…これ、買っても良いですか?』
ローにとっては予想以上の量であったが、自分でも欲しい薬品も中に入っていたので二つ返事で許可した。
「ああ。買ってこい。」
その後、買いたい薬品を揃えられた上機嫌な と船に戻った頃には陽が沈みかけていた。