第6章 初めての上陸
買い出しのつもりで街へ出た筈であったが、まず連れて来られたのはお洒落なブティックだった。
明らかにいつも自分が身に付けているものとは違う。ちらりと見えた値札を見て目が飛び出そうになる。
(もしかしたら、直ぐにボロボロになるかもしれないのに、こんなに良い服着れないよ…。)
自分には勿体無いとローに目で訴えるが、自分の意見を聞き入れるつもりは無いらしい。
「さっさと選べ。」
『で、でも…こんな服…私には…。』
「これじゃあ物足りねぇか?」
『違います!そういう意味じゃ無くて…』
これではいつまで経っても服を買えないと悟ったローはため息ひとつ吐くと店員を呼ぶなり何かを告げる。
その途端、自分の周りを店員が囲い込むと大量の服と共に試着室の方へと連れて行かれてしまった。
これも全部ローの思惑通りであった。
………数十分後。
「お似合いですわぁ〜。」
「このドレスもよくお似合いで。」
今まで着られれば何でも良いと思っていた にとってはこのような服は初めてであった。
『こんなにも可愛い服、私には勿体ないです。』
「今まで試着した服全部買っとけ。」
『ローさん、流石にそれはダメです!……うーん。じゃあ、せめてこれとこれで許してください。』
中々折れようとしないローに が先に折れた。
(ローさんって意外と頑固だよね…。)
なるべく動きやすくかつ落ち着いた色の洋服を何着か選んだことでローも納得したようだ。
それでも、大量の紙袋を抱えることになったのは、結局ローが足りないからと何着か買い足したからだ。
(もう船の買い出しというより私の買い物になってるけど大丈夫かな…。)
そんな事を考えつつも結局ローに連れて行かれる先で買うものは全て の使用する物ばかりであった。