第5章 鍛錬
「……ッ!馬鹿。やめろ。」
『ごめんなさい!』
着替えたばかりのローの服を濡らしただけではなく、そのままローを追い出す様にシャワー室の扉を閉めてしまった。
「び、びっくりした…。」
思わずそのまま床にへたりこむ。
(確かに叫んだ私も悪いけど、急に入ってくるローさんも悪いよね…。でも、心配して駆けつけてくれたのかもしれないし…。)
罪悪感に押し潰されそうだったが、さっさとシャワーを浴びてしまおうと思い、身体と髪を流す。
シャワーから上がると、彼のTシャツだとは思うが、新しい服もタオルの上に置かれていた。
彼なりの気遣いなのだろう。
ローのTシャツはサイズも大きい為、ほとんどワンピースの様になっていた。
有り難くそれに着替え、恐る恐る彼の部屋に戻る。
ローはソファーに座りながら、タオルで髪を拭いていた。
『ローさん…。その、さっきはごめんなさい。驚いてしまって、私…。』
「俺も急に入ったから悪かった。」
『私も騒いでしまったから…。それに、新しい服も貸していただいてありがとうございます。』
「次の島までそれで我慢してくれ。……まだ髪乾いてねぇじゃねぇか。乾かしてやるからこっち来い。」
ローは案外すんなりと許してくれた。もっと叱られると思っていたから肩の力が抜ける。
それよりも髪を乾かさずに出てきた事が気になった様だ。彼に促されるまま、ソファーの隣に座れば肩に掛けていたタオルで髪を丁寧に拭かれる。
見た目はとても厳ついのに、手先は繊細なのか、髪が傷まない様に丁寧にドライヤーで乾かしてくれた。