第1章 表面張力【幸村】
「部屋散らかってるけどごめんねー。」
と言いながら脱ぎっぱなしにしてた服やカバンを急いでクローゼットに押し込み2人がけのソファを綺麗にしそこに座ってもらった。
横に座るのもなんだか恥ずかしいけど、美容師なんて安月給だからそんな広い部屋には住めなくて私はベッドに腰を下ろした。
「横に座ればいいのに。」
「なんだか恥ずかしいし顔見ながらしゃべりたいから私はベッドでいいよ」
なんて言いながらまた家で乾杯した。
家でもたくさん飲んでるのに幸村君は顔色ひとつ変えない。
こっちはもう寝そうだよ。
「いつ向こうに戻るの?」
「そうだなぁ。明後日には帰ろうと思ってるよ。」
「久々会えたのに寂しいね。せっかく好きだったよ。ってのも数年越しに伝えられたのに(笑)」
「そうかい?そう言ってもらえると嬉しいね。」
当たり障りのない返事
なんでそんな普通なんだ?
なんだかこっちばっかりドキドキしてるのに眠気も飛んだしムカついてきた。
仮にも女の子の一人暮らしの部屋なのに
なんか、こう…。いや、言葉に出来ないけど。
やっぱり私は幸村君が好きみたいだし。
なんか再会した事でより好きが増してしまった気がする
綺麗な思い出しかないせいだろうか。
今は別の人の物なのに。
今こそこの想いに蓋をするべきなのに止まらない。
私は意を決してソファにいる幸村君の横に行った
「ねぇ。日本に帰ってきた思い出作らない?」
やばい事を言ってるのはわかってる。
でも自分の性格と言うかキャラと言うかでなんとか誘ってみた