(名探偵コナン】生まれ変わったら名探偵の姉でした(改)
第37章 漆黒の葬列 後編
──────灰原(宮野志保)side
私は松田刑事や工藤くんと別れた後にピスコに攫われ、酒蔵で解放されて大人に戻った時用の清掃員のツナギや防護服、彼が持って来たAPTX4869の未入手データが入ったUSBを貰った。そして教えられた、「ここにはベルモットも潜んでいて、志保ちゃんがいるのを伝えたからジンとウォッカが間も無く来る」と。それで解毒剤を飲んで大人の姿になったら煙突に手足を突っ張りながら登って隠れているのだけど、電話で工藤くん達と会話している途中で元の姿に戻ってしまった……。床に通信機を落としてしまって電話が切れたのだけど、離さず持ってる余裕が無かったうえに壊れてないし、きちんと回収して隠れ込んだ。
そして解毒薬を試飲して改めて、それにしても、と危機感を抱いた。今回初めて解毒薬の試作品を使ってみたけど、副作用の心臓から全身に響く痛みがAPTX4869を飲んだ時より弱かった。それは副作用を弱めて作ったので当然だ、かと言って何度も使用出来るものじゃけれど。ましてや白乾児なんてお酒を使った工藤くんは、検査に異常がなくても肝臓に負担がかかっている。その事を聞いた後には勿論、成分を調べて細胞の増殖速度を速めるエンハンサーの要素を発見した。それも風邪になって免疫が落ちた状態で、医薬品に用いる何倍も強い作用を、副作用も同等に引き起こすものを。
とは言え、一般の医者では普通の血液検査や健康診断には項目が無いから、病院じゃちょっと虚弱体質に思われてお仕舞い。だから抗体が出来た工藤くんにはもう、安全な範囲の解毒薬など効かなくなった……。
灰原「(……これで工藤くんにも飲める、副作用がマシな薬が作れると良いのだけど)」
バシュッバシュッ
灰原「!!」
いい加減暖炉で突っ張り続ける手足が痺れてきた頃、突然この酒蔵の外から聞こえる銃声。バンッと大きな音を立てて扉が開かれ、「あれ?妙だな……」と不思議がる男の声に心臓の鼓動が跳ね上がったような感覚がした。ウォッカの声だ。部屋中を歩く足音が二人分あるから、ジンもいる。室内は彼ら以外の物音が無いほど静かで、僅かな呼吸さえまだ暖炉にいる事を勘付かれる気がして、気配を隠そうとじっと息を止めていた。苦しいほどの、緊張感。