第1章 开始
「 失礼します、マイキー 」
「 夏羽? 入れ 」
がちゃり、とドアを開ける。
座っているのは【梵天】首領、無敵のマイキーこと佐野万次郎( サノ マンジロウ )。
春とうちを見かねて、隊長_武藤康弘( ムトウ ヤスヒロ )の元に届けた張本人だ。
「 ……一人だろ? もう良いよ、おいで夏羽 」
「 ……………まんじろ、 」
「 ん、どーした 」
するり、と髪を撫でてもらう。
王であるマイキーに絶対忠誠を誓っている春とうちは、ずっとマイキーの側にいた。
マイキーの側で、マイキーを王にする。
春とずっと一緒にいることを約束したあの日に同時に決めたことだ。
マイキーに背くヤツは誰であろうとスクラップだ、生きる価値なンてねェ。
そう唱えながら、春と共にマイキーに付いてきた。
マイキーと色ンな話をするうちに、お互いがお互いの安心出来る場所になっていた。
そして、唯一まともに『オンナノコ』の口調で話せる相手になった。
万次郎はうちにとって、春の次に大切な存在だ。
2人の為なら命なんていくらでも投げ捨てられるし、ソレが無駄だとも思わねェ。
何の為に生きているかと言えば、ソレは当然三途春千代と佐野万次郎の為であって。
自分自身に何か価値があるかと考えても何も出てきやしねェし、取り柄は殺しだけ。
「 ……ね、まんじろ、 」
「 ん 」
「 ……春と万次郎だけは、居なくならないで 」
「 …三途はどうか知らねぇけど、俺はずっと夏羽に居てほしいと思う。 むしろこっちからお願いしたいくらい。 ……頼むからお前だけは居なくなるな 」
「 うん。 ……一緒に、堕ちよう? 」
万次郎も、うちも、とっくのとうに心は擦り切れてる。
でも、だからこそ万次郎と一緒に居る時間はお互い寄り添える時間。
不安定に揺らめく心の声を、素直にぶつける。
傷を舐め合うようだと嘲笑われても、別に良かった。
ぼろぼろの状態で彷徨っていたうちらが、今はこうして仲間に恵まれて。
これが幸せだと言い切れはしないけど、ちいさく笑えるようにまでなったから。