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運 命 。【 東リべ 】【 梵天 】

第3章 标志


「 で? 夏羽がここに来るっちゅーことは、あの約束のオハナシで合っとる? 」

「 はい。 同僚からこの組織の話をされました 」

「 ほう? 」

「 手出しはしない。 荒らさない。 ……忘れてませンよね? 」

「 当たり前やんか!! ちゅーか、夏羽がおる組織に対して闘いに行くなんて自殺行為、この僕がするワケがないやん? 」

「 あくまでも確認ですので。 ガーディアンとしてのことも、今一度確認をお願い致します 」

「 佐野万次郎と三途春千代やろ?? 解っとるって 」


これで、いい。

梵天に手出しはさせない。
佐野万次郎と三途春千代に手出しはさせない。
約束は、守ってもらわねば。

僅かに落とした目線の先にあった革靴が動いたのを見て張さんの方を向けば、何が可笑しいンだか、ニタニタと笑っている顔が瞳に映る。

……どこか薄ら寒い、白々しい笑顔。
三日月の様に曲がった口元は、まるでチェシャ猫のようだった。


「 なぁ、夏羽 」

「 はい 」

「 僕は、僕はやで? 僕はな、梵天に手を出すなとは警告しとんねん。 上のモンから下っ端の野郎共まで、ちゃぁんと注意はしてんねんで? 」

「 はい 」

「 ただな? 個人的にはそうはいかへんっちゅー話や 」

「 …お断りします 」

「 なーんも言っとらんやんけ。 ……ウチに、“闇” に来てくれればホンマに諸手を挙げて歓迎すんのになぁ 」

「 お断りします 」

「 ハァ。 ………まぁええわ 」


本当に、何が可笑しいンだか。
余裕の表情を崩さないこの人間の焦った顔は、何をすれば見られるのだろうかと場違いなことを考えてしまった。

何万回目かのこの勧誘を完全に無視し、時計をちらりと見やる。

………春に会ってねェ。
この1週間、ずっと “闇” についての情報を集めていた。
事情を知っているマイキーにだけ要件を伝え、あとは全てほっぽりだしてここまで来た。
説明は出来ねェが、せめて謝らねェとな。

張さんに目だけで会釈をし、くるりと背を向けて部屋を出た。
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