第2章 使命
人が居ねェのは部下に確認させてあるし、もし見られてもソイツを殺せば良い話。
ぞくり、と久々に身体を駆け巡る高揚感に浸り、にこりと嗤う。
どんッという音の直後に少年の身体から血飛沫が散り、悲鳴を上げる間もなく崩れ落ちた。
じわじわとアスファルトを濡らす血は、あいも変わらず紅かった。
「 良かったなァ、独りになっちまう前に殺されてよォ。
どうせ親御さんも殺されンだ、親不孝だと罵られることもねェから安心して逝けよ? 」
労る様に頬を撫でれば、ニヤつきながらこっちを見ていた春が近づいて来る。
ぽん、と頭に大きな手が乗ったのが心地良くて、思わず目元が緩んだ。
「 やっぱオマエ最ッ高♡♡ しっかり心の臓貫いてやがるじゃねェか♡♡
スランプっつー言葉を作った野郎に夏とコレ見せてやりてェなァ♡♡♡♡ 」
「 顔に惚れ具合がダダ漏れだぞ春ゥ。 うちを何だと思ってやがるっつっただろォが 」
「 今日も俺のオンナが世界一カッコいい、いや銀河一?? 宇宙一??? 」
「 うち以外の女に同じこと言っても全然喜ばれねェ台詞ランキング1位だな 」
「 ハ???? テメェ以外に言うワケねェだろォがブッ飛ばすぞ?????? 」
「 逆ギレしてンじゃねェよらゔが溢れるだろォが!?!? 」
「 らゔって言い方可愛いなカッコよくて可愛いとか何??? 俺を殺す気????? 」
「 キャラ変しすぎな????? 」
傍から見れば頭の可笑しなバカップルと思われるに違いねェ。
だが、春の隣にこうして居られるなら、バカップルだろうが何だろうが構うもんか。
誰に溢しているかも解らないささやかな本音を胸の奥にしまい込み、車に戻る。
「 今日の死体処理班ドコ? 」
「 は、ハイ! 自分です!! 」
「 おー、テキトーに頼むワ。 人に見られねェようになァ??? 」
見られたらどうなンのか解ってるよなァ? と笑顔で軽く脅し、春へ向き直る。
窓を閉めると、直ぐに車は発進した。