第1章 水色天国
……そういえば。
桃城はコートを見回したが、とうの手塚がいないようだ。欠席とか? でもそんなこと言ってたっけ?
「すみません、遅れました」
「いやいや、お疲れ様」
「選挙までの間はしばらく遅れることが多いかと思いますが、よろしくお願いします」
「ああ。無理するんじゃないよ、手塚」
「はい」
顧問に頭を下げる手塚と今の会話を聞いてようやく思い出す。9月末に生徒会選挙があるのだ。手塚は出馬する予定で、7月のうちからこうして説明を受けなくてはならないのだ。
手塚が部活に来て程なく、海堂も戻って来た。何かプリントを1枚もらっており、手塚に話しかけていたことから、海堂は千紘に応援演説でも頼まれたのだろう。
「王子様から呼び出し食らうなんて女子たちに僻まれそうだなぁ、お前」
「うるせぇ。そんなんじゃねぇ」
どっしりと組んだ肩を、海堂は大変嫌がって払いのけた。桃城は面白くねぇなと思いつつも、部活に勤しむのであった。