第1章 水色天国
それから特に何ということもなく、季節は過ぎ行き9月。全国大会に向けて走った夏は終わった。奇しくも関東大会止まりで、部員全員で悔し涙を流したが、部長を手塚に据えて新生青学として突っ走ることとなった。
どうやら女子テニス部も全国大会へと駒を進めることはできなかったようだ。新学期の朝早々、五十嵐は色々言っていた。千紘を選手登録しなかったからだとか、オーダーが悪かったとか、今年の山吹が強すぎたとか。
「……まぁ、何を言っても結局は私達みんな練習不足なのよ」
「そりゃそうだな。来年こそはお互いレギュラーに入んねぇとなぁ」
「大変だなぁお前ら運動部は。でも2人とも頑張れよ。俺応援してっから」
「ありがと」
「おう」
なんだか少し穏やかな空気を醸し出す2人に茶々を入れようとしたが、無粋だと思い、桃城は別の話題を出した。
「そんなに栗原って強いのか?」
「もっちろん! 当たり前でしょ!?」
机をバンと叩いて鼻息を荒くして叫ぶ。音に驚いたクラスメイトたちがこちらへ視線を注ぐが、音の主が五十嵐であることを確認しては、各々の会話や作業へと戻っていった。
桃城は五十嵐のこういった、やや荒っぽいようなところを少しだけ苦手としていた。