第1章 水色天国
栗原は菊丸に軽く会釈してから、「海堂を少しだけ借ります」と言い残し、海堂と共にその場を後にした。
「栗原ってば男ギライなんだから触っちゃダメだろ~桃ちん」
(やっぱりなぁ。んなことだろうと思ったよ)
元より海堂は女子にベタベタと触るような性分の男でないにしろ、もう少し心配そうな素振りは見せるものかと思う。しかし、桃城の目には心配というよりは呼吸が整うのを待つのに近いように見えた。
「英二先輩も栗原のこと知ってるんスか?」
「もっちろん。アイツ有名人じゃん。まぁフツーに友達っていうか、仲良くしてるのもあるけどさぁ」
「男嫌いなのに英二先輩や海堂とは仲良し? 変なヤツっすね」
「そこそこ。栗原のこと変なヤツって思ってるうちは絶対に心開いてくれないよん。アイツ自身のこと認めてやんないとね~」
「はぁ……」
(男嫌いな王子様。皮肉だなぁ)
さて、これ以上構っていられない。そろそろ桃城自身も練習に戻らねば手塚の雷が落ちるかもしれない。そう思った桃城は荒井と池田にも声をかけて休憩は終わりにした。