第1章 水色天国
――そんなに海堂と仲が良いのだろうか。
荒井、俺には勿論くん付けだし、かなり好意的で今も熱心にあれこれと話しかけているマサやんにだってそうだ。しかし、海堂にはくん付けしていない。
そもそもとして、海堂は決して人当たりがいいヤツとは言えない。常にニコニコとして何を考えているのかわからないような人間と友達よろしくやるようなタイプでもないだろう。2人の間に何があるのかは知らないが……。
付き合ってるとか? ふと、そんなことを思い付く。
(ま~さ~か~の~?)
桃城の好奇の目にさらされていることに気付いたのかそうでないのか、じりじりと彼女は後退していく。そして桃城はすかさず、フェンスにまだ置き去りの指の上に自分の指を重ね、軽くホールドした。
「待てよって。とって食ったりしねぇよ」
その瞬間、栗原の顔がギョッと歪み、ハッと息を吸い、口を開いた。
「ッ、き、き、きゃ」
まずい。直感がそう言っている。どうしたもんかと慌てているとタイミングを見計らったかのように海堂が駆けつけ、桃城の胸板を陥没させそうなほど強い勢いで押し退けた。