第1章 水色天国
「海堂に渡すモンでもあるなら預かってやろうか」
「え?」
つい、ほんのつい、興味が高じてしまっただけなのだ。おそらく彼女の目に桃城の姿がまともに映ったのはこれが初めてだろう。突然のことだからこそ出たギョッとした、歓迎されてはいない表情は桃城にとっては衝撃以外の何物でもない。
「大丈夫、海堂に直接言わなきゃいけないこともあるから。えっと……」
「桃城。桃ちゃんでいいぜ」
「そう。僕は栗原千紘。よろしくね、桃城くん」
(おっと……?)
桃城は思わずにやけてしまった。それは決して良い意味ではなくて。
「それわざとか?」
「何が?」
「桃城くん、て」
「……そんなことないよ」
完璧なスマイルで否定されてはこちらとしてもこれ以上言及するわけにはいかず、にやにやとして、桃城は池田と荒井とそこに居続けた。そして、彼女からすれば、自分達がいればいるほど迷惑そうにしているように見えた。