第1章 水色天国
ある日のことだった。
放課後、部活に励んでいると池田が「あ!」と指を指した。
「栗原さんだ」
「あ、王子様?」
テニスコートのフェンスの外、制服を着た栗原がキョロキョロと誰かを探している様子だった。彼女に気付いて、嬉々として手を振る池田とは対称的に、荒井はどこか不満げあるのを桃城は見ていた。
「おい、男女! 何の用だよ。お前部活サボりかぁ?」
「ああ、荒井くん。海堂に用があるんだけど」
「栗原さん! 海堂は今ミニゲームしてるんだけど、もうすぐで終わるよ」
「そうか。ありがとう、池田くん」
荒井の、栗原を小馬鹿にしたような失礼な態度に桃城は腹を立てつつも、池田がすぐさまフォローに入ったのを確認して、ほっと息をつく。
栗原は海堂と同じクラスだと聞いている。当然テニス部に訪問したのも日直か何か絡みだろう。
(んにしてもマサやんは栗原に友好的だけど、荒井のヤツはえらく吠えてんなぁ。好きな女、とられてたりして)
その予想が大当たりであることを、この時の桃城はまだ知らない。