第1章 水色天国
「助かったよ。海堂が隣にいないってだけでクラスの子にお昼誘われちゃってさ」
「海堂のヤツ、番犬みてぇだな」
「まぁそのお陰で助かってることは多いから」
桃城はそこでようやく栗原の素の表情を見たような気がする。優しい微笑み、いつも気取った笑顔を繕っているのがバカに見えるくらい綺麗だ。と、心の中で留める。
「ずっと気になってたんだけどよ、何で海堂と仲良いんだ?」
「アイツがテニス以外のことに興味がないからじゃない? 僕みたいな変なヤツが隣にいても邪魔さえしなければきっと何でもいいんだよ」
「そうか?」
(変だと思ったヤツを無視って方法で隣に置いておけるほど、アイツ器用じゃないだろ)
思うところはあるものの、なんだか楽しそうに海堂について話す栗原を前に、とても言う気にはなれなかった。
……栗原はやはり海堂のことが好きなのだろうか。初めて出会った時と同じような好奇心が湧き出てくるのを、桃城は腹の底で感じていた。