第1章 水色天国
翌朝の栗原からも、やる気は感じられなかった。ただ、本人よりも熱心に栗原を売り込む五十嵐の姿を見て感化されたのだろう。昨日よりは多少やる気を抱いた様子だ。
誰かのために真剣になれるその姿に、桃城は何となく井田が五十嵐を好きになった理由がわかったような気がしていた。
「ねぇ、お昼休みにみんなでお昼食べようよ。どうせ桃と井田は男2人で悲しくご飯食べてるだけなんでしょ?」
「五十嵐お前ホンット~に一言余計だなぁ! まぁ! みんなで飯食うのはいいけどよ」
前言撤回。井田は五十嵐のどこに惹かれたと言うのだろうか。怒りに燃える桃城の血管が、ピキピキとその不満を主張するが、五十嵐がそれに対して否を感じている素振りは――ない……。井田と肩を組み、声を潜める。
「井田っち、色々考え直した方が良いんじゃねぇの?」
「安心しろ、桃。俺もああいうところには引いてるから。ただそのぶんいいとこもあんだって」
(尻に敷かれそうだなぁ……)
少しだけ友人が心配になる桃城だった。