第1章 水色天国
「栗原くん出るんだ。俺、君に投票するよ」
「俺も投票してやるよ、王子サマ」
「いいよ、君たちのクラスからも選挙に出馬する子がいるだろ? 同じクラスの子に投票してあげなよ」
2人はキョトンとするほかなかった。普通ならば当選したいがために、他クラスの人にも投票を懇願するくらいであるが……。
「じゃあよ、代わりに朝の挨拶運動俺も参加させてくれよ」
「えっ?」
「それいいなぁ、桃! 俺も参加させて!」
「2人より4人の方が絶対いいって、栗原くん!」
「いや、僕は……」
何か言いかけた後、栗原はため息をついて「そこまで言うなら」と首を縦に振った。桃城と井田は、五十嵐が手にしたプリントの要項をメモし、ご満悦のようだ。
「ありがとう、3人とも。無理な日や寝坊した日は無理して来なくていいからね」
完璧な笑顔を張り付け、栗原は自分の教室へと帰っていった。心中穏やかそうには見えないその背中に、桃城は視線を送ることしかできなかった。