第1章 水色天国
「だ、だって全部本当のことだよ!」
「君は僕を過大評価しすぎだよ。話も誇張しすぎ」
「でも、私は栗原くんの魅力を……」
「『だって』も『でも』もいらないよ。これ以上僕の知らないところでヘンな噂が流れるのは嫌だからね。ただ、僕のことを褒めてくれるのは嬉しいよ。ありがとう」
そういって微笑む栗原はさながら王子様。こりゃ女も惚れるわと納得せざるを得ない。五十嵐はばつが悪そうに俯いたのち、消え入りそうな声で「ごめんなさい……」とこぼした。それを聞いた栗原は少し満足そうに、「いいえ」と返し、もやっとした空気が何だか軽くなったように思う。
「本当は部活の時でも良かったんだけど、他の子が私も私もと言い出したら厄介だし、今の方がいいだろうと思って。これ、お願いしたい校門前挨拶の時間と日程」
栗原に渡されたプリントを、桃城と井田が覗き込むと、太字の明朝体でデカデカと「生徒会選挙の選挙活動について」と題してあった。それは、あの日の桃城の予想通りということである。