第4章 おむかえ
腰にたずさえた氷雪の剣の柄と鞘の僅かな隙間から、ヘブラの冷風にも負けない冷気が滲み出る。
その様子を見逃さなかったリーバルは、ふんと鼻を鳴らした。
「なんだい、その剣は。まさか特別な力がついてる剣じゃないだろうね?誰が振るっても攻撃できるような剣を持って、よくもまあ姫の護衛なんてできたもんだ」
馬鹿にしたような口ぶりだが、気にしていることを言われて言い返す言葉が見つからず、マヤは唇を噛み締めた。
「おやおや?何か言いたげだねぇ、お嬢さん?僕から1本でも取れたら、認めてあげなくもないよ」
マヤは少し考えたが、返事の代わりにカチンと剣を鞘に収めた。
少しだけ霜が舞う。
「では、場所を変えましょう」
リーバルは満足そうに笑うと、マヤの肩を掴んだ。
マヤの嫌がる声を無視し、村の向かいにある平地へ向かった。
従者がリトの若者に連れていかれる様子を、村長の肩越しに目撃したゼルダは、村長ののんびりとしたお話に焦ったように相槌を打った。
従者のリンクの方をちらちらと見やったが、彼はリトの村人が勧めてきたサーモンムニエルを夢中で頬張っていたので、ゼルダは心の中で大きなため息を着く。
その後、数10分ほど村長の話は続いた。
開放された頃は既に2人の姿はなく、戻ってくることを信じて待つことにしたのだった。
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兄弟岩近くの草地まで来たリーバルは、ストンとマヤを降ろした。
浮遊感が抜けていない彼女は、よろけて膝をついた。
その様子を見たリーバルは、馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
「おやおや?場所を変えようって言ったのは君の方だよねぇ。ハイリア人の君に配慮して、ここを選んであげたんだけど」
嫌味には返さず、立ち上がって膝を叩く。
鞄とマントを落とし、柄に手をかけた。
それを合図とみたリーバルは満足そうに微笑むと、彼も背中からオオワシの弓を取った。
そして、翼を広げて地面に跪く。
途端に彼の周りから、上昇気流が発生した。
「本気でいくからね」
そういうや否や、彼は勢いよく地を蹴って飛び上がる。
なんて勝負を受けてしまったんだと後悔した時にはもう遅く、マヤが抜刀した時、彼女の暗い瞳には3本の矢が映っていた。