第4章 おむかえ
少し待っててください、というハイラル王国王女の言葉に頷き、マヤはぽつんと広場に取り残された。
ヘブラ地方特有の、しんとした風が吹くと、鼻や耳の温度が下がって、くしゃみが出そうになる。
その時、櫓のように組み立てられた足場の下から風の音がしたかと思うと、それは竜巻のように回転し、勢いよくリトの若者が飛び上がってきた。
結わえていた髪がほどけ、髪留めがどこかへ飛んでいく。マヤは少しむっとして、現れた彼を睨んだ。
「どうだい今の?君にはとても真似出来ない芸当だろう?」
意気揚々と柵に降り立った彼は、得意げな顔をして腕組みをした。
「そうですね。あぁ、髪留めが…」
手櫛で髪を整えたが、彼は特に気にする様子は無い。
それどころか、少しオーバー気味に身振り手振りで話し始めた。
「上昇気流を発生させ、空高く舞い上がる僕の技!空の支配者リトの中でも、芸術品とまで言われるテクニック。この技をもってすれば、厄災ガノンに勝てること間違いなしだよ!そして、一族でも優秀とされる弓の使い手…つまり、この僕リーバルこそ、厄災討伐の要に相応しい戦士ってことさ!」
「…よく喋りますね」
皮肉めいてそう言うと、さっきまで爛々としていた彼の目が、鋭く変わった。
そしてこちらに歩みよってくると、ずいと顔を近づけてきた。
「…ふん。せっかくこの僕が、はるばるここまでやってきた君に、歓迎の意味も込めて見せてやったというのに」
「それはどうも。貴方がリーバルですか。くれぐれもうちの姫様にはそんな口聞かないようにしてください、ね」
少しばかり背の高いリーバルに負けじと言葉を返す。つい癖で、腰に携えている剣の柄に手をかけてしまった。