第1章 misericorde
マヤは、珍しい植物を探すため、故郷を離れ旅に出ていた。
もう少し遠くの東の島国から、ここハイラル王国へつい1年ほど前に入国した。
様々な自然環境が豊富なハイラルは、探索にはもってこいの素敵な場所だと、マヤの胸は希望に満ち溢れていた。
東から西へ、西から東へ、反時計回りにハイラルを回ろうと考え、足を進めていったところ。
ちょうど今、北西に位置する寒冷地域、リトの村に滞在している。
ここに来るまでに2つほど村や集落を回ったが、ここは異国情緒溢れ、その様子をマヤはとても気に入った。
かれこれ2ヶ月以上お世話になってしまっている。ここの村長は、あまり人間が訪れなかったためかマヤを大層気に入ってくれて、宿泊や食事など、手厚くもてなしてくれた。
村民も目つきは鋭いが、いい鳥(?)ばかりでとても居心地が良かった。決して広くはなく、村民も多すぎずむしろ少ないくらいだが、みんな穏やかでのんびりと暮らしているように見える。
その村の穏やかさは、恐らく周囲に目を光らせてる村の戦士たちが守っているようで、マヤも戦士を目の当たりにした際は、あまりの迫力に腰が抜けそうになったくらいだ。
その中でも一際強さを誇るのが、リトの青年─リーバルだった。
マヤと年が変わらないぐらいだが、弓の使い手で、性格は大人びていて自信に満ち溢れた佇まいだ。
加えて皮肉屋なところもあるが、マヤは彼の全てに惹かれ、密かに恋心を抱いていた。
その気持ちを表に出したら、きっと一晩でリトの村はもちろん、本人にまで情報が回ってしまうに違いない。
絶対に誰にも知られてたまるか、と思いながら村での滞在生活をそれなりに楽しんでいた。
彼と話す機会は早々ないが、朝日が登ると同時に広場から飛び立つ彼の姿を見るのが、毎日の楽しみになっていた。