第2章 雨止み待つ瞳
リーバルは、わざとらしく咳払いをひとつすると、さも気にしてないかのように涼しく口角を上げた。
「そういえば君、自分の今の状況わかってる?」
彼の質問にマヤはキョトンと首を傾げた。
「え?なんのことです?」
「その服」
マヤは、白い羽先で刺された自分の胸の当たりを見る。
「服…あっ!こ、ここにいるなら、あっち向いててくださいね!」
「なんだよ今更。僕はここに来たときから君のそれ、見えてんだけど」
その言葉に、ハッとした表情を浮かべたマヤは、自身の胸を両腕で隠す。
「え、見えてるってわかっててここへ来たんですか?やだちょっと、リーバル…私の事そういう目で見て…」
「はぁ!?君ねぇ、勘違いもいい加減にしてくれないかな?君のその産まれたばかりの雛鳥みたいな体を見て、僕が盛るとでも思ったのかい!?言っとくけど、僕は誇り高きリト族だ。種族の違う君にそんなことは考えないね!スコールをしこたま浴びてきたらどうだい!?」
まくし立てるように言われたマヤは面食らったが、彼の端々に刻まれた言葉を理解すると、胸の前で組んでいた腕を解き、また地面に投げ出した。
「なーんだ。じゃ、別に問題ないですよね」
私が裸じゃない限り、とマヤは続け、安堵したように息をついた。
豆鉄砲でも食らったように、リーバルは目をぱちくりさせると、フンと鼻を鳴らし、一応マヤに背を向けてドカッと胡座をかく。
何故こいつはこうも無防備なんだ…疚しい意味ではなく、魔物に出くわした時だって、最低限の防衛はするが、どこか上の空でまるで自分に全く興味がないようなそんな感じ。
まったく…いつかことんと命を落としてしまいそうだ。
ちらり、と肩越しにマヤの方を見やると、あろうことか彼女もこちらを向いていた。
「…なに?」
目が合った瞬間、リーバルは顔を逸らす。
「背中が、とっても逞しいなあと思いまして」
それとなく言うマヤの言葉に、リーバルは少し肩を震わせた。
「君、ほんとになんなの?どうしてこう、僕の…」
気持ちを…と言いかけてリーバルは、ハッと口を噤んだ。
これではまるで、僕が彼女を意識してるみたいじゃないか!